iPhone 18 Proの星空写真はどこまで一眼カメラに迫るのか? 広角から望遠まで比較

近年のiPhoneは驚くほど印象的な星空を写し出します。では、その実力は一眼カメラにどこまで迫っているのでしょうか。

今回比較するのは、iPhone 18 Proとミラーレス一眼カメラのFUJIFILM X-T5です。X-T5には、広角のSIGMA 16mm F1.4、中望遠のXF56mm F1.2 R WR、望遠のSAMYANG 135mm F2を組み合わせました。

iPhoneはナイトモード30秒で撮影しますが、EXIFに記録されるシャッタースピードは10秒です。このため10秒露光を3回撮影して重ねるスタックを行っていると推測されています。このスタックとは、複数の写真の星の位置を揃えて重ね合わせ、ランダムなノイズを減らす方法です。

そこでX-T5もシャッタースピードを10秒に統一し、3枚スタックしました。

また、iPhoneは画像処理を含めた実力を評価するためJPEGで撮影。一方、X-T5は比較の基準とするためRAWで撮影し、Sirilでスタックと基本的な階調調整と緑かぶりの除去のみ行いました。追加のシャープネスや局所コントラスト強調、ノイズ低減は行っていません。 いずれも三脚に固定し、赤道儀による星の追尾は行っていません。

なお、iPhone 18 Proの星空撮影に適したF値や保存形式については、別記事で詳しく検証しています。今回は撮影設定そのものではなく、ミラーレス一眼カメラとの描写力の違いに注目します。

広角編|iPhoneが予想以上の実力

まずはiPhone 18 Proのメインカメラ(24mm相当)と、画角が近いSIGMA 16mm(約24mm相当)を比較します。iPhoneは絞り開放のF1.48、X-T5も絞り開放のF1.4、シャッタースピード10秒、ISO3200で撮影しました。

iPhone 18 Pro|F1.48・ナイトモード30秒

X-T5+SIGMA 16mm F1.4|10秒×3枚スタック

写真全体を見ると、iPhoneのほうが天の川や星のコントラストが高く、迫力があります。今回の仕上がりでは、見た目のインパクトはiPhoneが上回っています。 小さなセンサーでここまで描写できる背景には、画像処理の効果が大きいと考えられます。では、拡大するとどうでしょうか。

① 星が少ない領域|ノイズと画像処理

X-T5は3枚スタックすることで、背景のノイズ(ざらつき)が減少しています。ノイズに埋もれがちな小さな星や天の川の淡い部分も見やすくなるのが、スタックの効果です。

しかし、iPhoneの背景はそれ以上に滑らかで、見た目のノイズが少なくなっています。 センサーサイズで不利なiPhoneがここまで滑らかな画像を得ていることから、スタックに加えて、積極的なノイズ低減(平滑化)などの画像処理が働いていると考えられます。

② 天の川中心部|星の分離と色、天の川の構造

天の川中心部では、印象が一変します。

iPhoneも天の川の細かな濃淡を比較的よく残しており、①の星が少ない領域ほど強い平滑化は見られません。しかし、X-T5の描写力が際立ちます。 X-T5では小さな星まで背景から区別しやすく、星像も小さくシャープです。青白い星や黄色みを帯びた星など、色の違いもよく分かります。iPhoneも星の色の傾向は捉えていますが、星像は大きくぼやけています。

iPhoneの天の川が印象的に見える理由とは?

拡大するとこれほど描写に差があるにもかかわらず、写真全体ではiPhoneのほうが天の川のコントラストが強く、印象的です。

その理由として、iPhoneはスタック処理のほかに、星が少ない領域では積極的にノイズを抑え、天の川のように細かな構造が多い領域では、ノイズ処理を控えている可能性があります。 さらに、階調や局所コントラストの調整なども行っているのかもしれません。

③ 左下隅|星の形と画像処理の限界

最後に、同じく星が少ない左下隅を比較します。ここでも①と同様に、iPhoneのほうが背景のノイズが少なく、滑らかに見えます。

一方、星の形には違いがあります。X-T5では明るい星が鳥の翼を広げたように変形しています。これはレンズの特性によるものと考えられ、3枚スタックしても改善しません。

対してiPhoneでは、このような変形は目立ちません。レンズの特性が異なるためか、画像処理が影響している可能性もあります。

ただし、iPhoneでも明るい星の周囲には青いにじみが残っています。このにじみが②の天の川の濃淡と同様に、ノイズではなく残すべき構造として扱われ、平滑化されなかった可能性も考えられます。 つまり、背景を滑らかにしながら天の川の構造を残すような画像処理が働いていたとしても、光学的なにじみまで完全に取り除けるわけではないようです。

広角編のまとめ

広角では、iPhone 18 Proが印象的な写真となっていました。背景ノイズを巧みに抑えながら天の川の濃淡を残し、X-T5以上に迫力のある仕上がりとなっています。

一方、拡大する星の形などでX-T5が優れています。iPhoneは画像処理によって星空を印象的に見せ、X-T5は細かな星の情報を豊富に残している。 両者の特徴がよく表れた比較となりました。 では、さらに焦点距離を長くすると、この関係はどう変わるのでしょうか。

中望遠編|すばるとカリフォルニア星雲を比較

続いて、iPhone 18 Proの2倍ズーム(F値:1.8)とX-T5+XF56mm F1.2(F値:1.8)の3枚スタックを比較します。画角が同程度になるようにiPhone 18 Proの画像をトリミングしていますが、右にすばる(プレアデス星団)と左にカリフォルニア星雲のある領域が写っています。

iPhone 18 Pro|F1.8・ナイトモード30秒

X-T5+XF56mm F1.2 R WR|10秒×3枚スタック

まず目を引くのは、すばるです。iPhoneでも青白い星が鮮やかに写っています。ただし、星の周囲に見える青い広がりは、実際の反射星雲と光学的なにじみが混ざっているように思えます。

一方、カリフォルニア星雲はX-T5で画面左に淡い赤みを帯びた構造がうかがえますがiPhoneでは、はっきりとしていません。

そして、何より大きく違うのは星の数です。X-T5では画面全体に非常に多くの小さな星まで描写されているのに対し、iPhoneでは少ないです。

広角編では、iPhoneは天の川の濃淡を残しながら背景を滑らかに仕上げ、写真全体ではX-T5以上のインパクトがありました。 しかし、中望遠では細かな星の情報量に大きな違いが見られます。画像処理によってノイズを抑え、明るい星を印象的に描写できても、小さな星や淡い星雲の情報まで十分に残せるわけではないようです。

では、さらに望遠にしてアンドロメダ銀河を撮影すると、どれほどの違いが現れるのでしょうか。

望遠編|iPhoneの8倍ズームはどこまで通用するのか?

① iPhoneの1倍と8倍を比較|8倍ズームの秘密

まず、iPhone 18 Proの1倍で撮影したアンドロメダ銀河を、8倍相当にトリミングした画像と、最初から8倍で撮影した画像を比較します。

iPhone 18 Pro ×1 トリミング|F1.8・ナイトモード30秒

iPhone 18 Pro ×8|F1.8・ナイトモード30秒

両者を比べると、厳密には異なります。星の形がくっきりしてノイズが少ないのは×8で、小さな星まで多いのは×1でしょうか。しかし、大差はないように見えます。

そこで興味深い実験を行いました。iPhoneの望遠レンズを黒いテープで覆っても、4倍や8倍で問題なく撮影できたのです。

さらに、8倍撮影時のEXIFにはF1.8と記録されていました。望遠カメラはF2.8なので、暗い星空では明るいメインカメラを使い、クロップによって8倍相当の画角を得ている可能性が高そうです。

ただし、単純に拡大しているだけではなさそうです。

今回の比較用画像は、同じ画角のはずですが画素数やファイル容量が1倍をトリミングしたものより8倍撮影のものの方がずっと大きいです。このため8倍では48MPセンサーの情報、アップスケーリングなどを活用している可能性があります。

つまり、iPhoneの8倍は単なる1倍写真の切り出しとは異なる画像生成が行われている可能性があり、その仕組みも画質の違いに影響していると考えられます。

② X-T5+Samyang 135mm F2との比較|望遠で広がる画質差

続いて、X-T5にSamyang 135mm F2を装着し、F2・シャッタースピード10秒で撮影した3枚スタックです。 135mmはフルサイズ換算約203mmで、iPhoneの8倍(約200mm相当)とほぼ同じ画角になります。

X-T5+Samyang 135mm F2|10秒×3枚スタック

比較のため露出時間を10秒に設定しているため、星が細長く流れているのが目立ちます。それでも描写力は別次元です。

非常に多くの細かい星まで確認でき、アンドロメダ銀河も明るい中心部だけでなく、淡い外周部まで広がっています。なお、iPhoneでは星が大きくぼやけて星の流れが目立ちにくくなっていると考えています。

iPhoneでは広角の×1でも非常に高度な画像処理行っており、×8ではそれ以上の処理を行っていると考えられますが、それでも望遠ではX-T5(+Samyang 135mm F2)に大きく及ばない結果となりました。

まとめ|広角では健闘したiPhoneも、望遠では限界が見える

広角編では、iPhoneは背景ノイズを巧みに抑えながら天の川を際立たせ、X-T5以上にインパクトのある写真に仕上げていました。

しかし、中望遠から望遠になるにつれて、両者の描写力の差が明確になります。

今回の8倍撮影では、iPhoneはメインカメラからのクロップに加え、拡大や複数フレーム処理などを活用している可能性があります。それでも、X-T5が捉えた膨大な星や銀河の淡い広がりを再現することはできていません。 広角では高度な画像処理で大健闘するiPhone。しかし望遠では、光学的に得られる情報量の差をソフトウェアだけで埋めることは現時点では難しいという結論です。