星空や天の川の撮影には、一般的に「こうしないと撮れない」とされる常識がいくつか存在します。しかし、その常識が本当に正しいのか、実際に検証してみました。今回は、星空写真を撮影する際に言われることが多いポイントを取り上げ、実際の撮影結果を元に検証していきます。
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「APS-Cでなくフルサイズ一眼ミラーレスじゃないとダメ?」センサーサイズの影響
フルサイズセンサーはAPS-Cセンサーよりも大きいセンサーサイズを持つため1つの画素が受け取る光量が多くなります。そのためクリアな星空写真が撮れることや、暗い部分でも詳細を表現できるなどの理由でセンサーサイズが大きい方がよいとされています。しかし、実際にはフルサイズセンサーがなくても、十分に星空や天の川を撮影できることがわかります。また状況によっては綺麗な星空や天の川よりも写真全体の雰囲気が重要となることもあります。例えば、以下の写真はAPS-Cセンサーを搭載したFUJIFILM X-T5とXF8-16mm F2.8 R LM WRレンズを使用して撮影したものです。
この写真がフルサイズかAPS-Cか撮影されたものかはどうでも良いのではないでしょうか。天の川や風景も結構しっかり写っていますが、この場合は写真のディテールよりも雰囲気がとても気に入っています。続いてAPS-Cセンサーでも天の川や星が綺麗に写っている例です。
・FUJIFILM X-T5とXF8-16mm F2.8 R LM WRレンズで撮影

・FUJIFILM X-T5とXF18mm F1.4 R LM WRレンズで撮影


このようにAPS-Cセンサーでも天の川が十分に写し出されています。もちろん、フルサイズセンサーにはメリットもあります。例えば、SIGMA fp(フルサイズ)とSIGMA 16mm F1.4 DC DNで撮影した写真では、暗い部分のディテールがよりはっきりと表現されています。
しかし、いずれのセンサーサイズでも、適切に編集すれば差を感じることは少ないかもしれません。
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「広角レンズが必須?」レンズ選びのポイント
広角レンズを使うと広範囲に星空を収めることができます。そのため、星空や天の川を撮るためには広角レンズが必須とされていますが、実際には必ずしもそうではありません。
例えば、以下の写真はXF35mm F1.4 Rレンズを使用して撮影したものです。焦点距離は35mm、フルサイズ換算で53mmとなり、これは標準レンズに相当します。
高知県香南市の三宝山にあるシャトー三宝を撮影したこの写真では、現場では木が多く広角レンズを使うと、撮影範囲が広くなる分、余計な障害物が写り込んでしまいました。特に、周囲に障害物が多い場所では、広角レンズよりも標準レンズを使用した方が適している場合もあります。
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「明るいレンズが必要?」レンズのF値と撮影環境
明るいレンズとはF値が低いものになります。星空撮影においてはおよそF2.8以下が一つの目安とされているでしょうか。暗いものでも明るく写るため星空などの小さい明りを強調するときに適しています。一方で市街地が近いと街灯やネオンサインなどの人工光が多く、これらが空を明るくしてしまいます。明るいレンズだと、この人口光も明るくして星や天の川が見えにくくなります。次の写真は高知県佐川ナウマンカルストです。XF8-16mm F2.8 R LM WRレンズで撮影しました。


F2.8の明るいレンズで撮影した時、空が明るくなり過ぎることやノイズが目立つことがありました。どうしても地表付近まで明るくなってしまいます。撮影場所は山の中にあり、真っ暗で星空撮影に適していると思ったのですが、実際には佐川町市街地が少し離れた場所にあるため、その光が写真に影響して空や地表付近が異常に明るくなってしまいました。
次の写真はXF8mm F3.5 R WRというやや暗めのレンズで撮影したものです。
撮って出し(編集前)です。明るい港でしたが暗いレンズを使用することで人工光の取り込みを小さくして天の川を写すことができました。次の写真ではさらに明るい市街地のためXF8mm F3.5 R WRレンズをF4に絞って撮影しました。
同じく撮って出しです。市街地のわりに天の川が結構綺麗に写っていませんか。明るいレンズは真っ暗な場所で力を発揮します。しかし日本はとても明るくて安全な国です。それが星空、天の川を撮影しようとすると難易度上げています。日本で真っ暗な場所を探して行こうとしたら本当に、本当に大変なのです。しかし暗いレンズだと少し街明かりがあっても天の川は良く写ることがあります。
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「マニュアルフォーカスが必須?」オートフォーカスの性能
オートフォーカスでは星のように小さいものにピントを合わせられないことや、星は複数あるためピントが迷ってしまうことがあります。一方、マニュアルフォーカスでは実際に自分の目で見て調整できるため、ピントを丁寧に合わせられます。このためマニュアルフォーカスで撮影するべきとされています。本当でしょうか。以下の写真はオートフォーカスで撮影したものです。
FUJIFILM X-T5とXF18mm F1.4 R LM WRレンズを使用しました。どうでしょうか。オートフォーカスでも星空、天の川が綺麗に撮れていませんか。しかしながらオートフォーカスで撮影すると確かに失敗することもあり、また多くのカメラで検証したわけでなく、こればかりはカメラの性能に依存するかもしれません。ただ「マニュアルフォーカスで撮らなければいけない」という考えが星空、天の川撮影を始める難易度を上げていると思います。マニュアルフォーカスに自信がなければ、まずはオートフォーカスで撮影してみてはどうでしょうか。
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「スマホでは撮れない?」最新スマホでの天の川撮影
スマホは一眼カメラと比べてセンサーサイズが小さく、星空の撮影には向かないと言われてきました。しかし、最近のスマホは性能が飛躍的に向上しており、特に最新機種では、星空や天の川を驚くほどきれいに撮影することができます。次の写真はGalaxy S23 Ultraで撮影したものです。

一眼ミラーレスと比較しても遜色ないくらいに星が綺麗に写っていませんか。スマホで撮ったとは思えないほどのクオリティです。撮り方についてはこちらの記事を参考にしてください。
このように、高価な一眼カメラを持っていなくても、手持ちのスマホで十分に美しい星空写真を撮影することができることがわかります。
星空や天の川の撮影に必要とされる常識について検証し、実際の撮影結果を元に確認しました。結論として、高価なカメラや特別なレンズがなくても、今あるもので十分に美しい星空や天の川を撮影できることがわかりました。これから撮影を始めようと思っている方は、まずは手持ちのカメラやスマホで試してみることをおすすめします。