5,000万画素、2億画素と高画素カメラを搭載したスマホも登場していますが、それで写真は良くなりません。理屈と実際の写真で考察していきます。
画素数(ピクセル数)とは
画像データは小さな点(ピクセル)の集まりで出来ています。それぞれの点に色がついて写真が出来上がります。例えば1,000万画素の写真では1,000万個の点のそれぞれに色がついています。このため、画素数の多い写真の方がきめ細かくなります。
高画素で写真は良くならない
では1,000万画素、5,000万画素と高画素になるにつれて、よりきめ細かくなり画質が良くなると思われるかもしれません。「高画素=画質がいい」というイメージが世間一般に根強くあります。ですが、まず高画素を表示出来ないというディスプレイ側の限界があります。
例えばGalaxy S23 Ultraのディスプレイは約450万画素までしか表示できません。他の高性能なスマホも同程度です。つまり、1,000万画素の写真データでも約550万画素は捨てられて表示されます。タブレットやパソコン、テレビでも1,000万画素を表示できるものはほとんどありません。
しかし、中には8Kと呼ばれる約3,300万画素を表示できるディスプレイも登場してきました。では、このディスプレイを使った場合は、1,000万画素よりも5,000万画素の写真の方がよりきめ細かく表示できるのでしょうか。
理屈上は出来ると思います。しかし、次に人間の目の限界があります。海外では4K(約830万画素)と8K(約3,300万画素)のディスプレイを人間は見分けられるかという実験や理論的考察がいくつかされています。詳細は省きますが、結論は「すごく大きな画面にすごく近づけば見分けられる人もいる」です。これから推測するに830万画素かそれ以下で、ほぼ人間の目の限界ではないでしょうか。
個人的な意見としては、仮に8Kで見分けられる画像の差があったとして、写真ってそうやって楽しむものでしょうか。
少なくとも普段、スマホやタブレット、パソコンで写真を見る分には関係のない話です。
なので、表示するディスプレイ側の限界、人間の目の限界があり800万画素もあれば十分ではないでしょうか。
Galaxy S23 Ultraの場合
Galaxy S23 Ultraの場合は広角カメラだと1,200万画素、5,000万画素、2億画素で撮影できます。しかし表示出来るのは450万画素です。これまで何度も「高画素=高画質な写真」となる記事を見てきました。実際に自分で1,200万画素、5,000万画素、2億画素で何度も撮影して見比べても1ミリも違いません。
しかし高画素を支持する側としては「画素数が多いとトリミングしても十分な画素数を保つことができる」と反論してくるかと思います。例えば2億画素で撮影して10分の1のサイズにトリミングしても2,000万画素残ります。確かに十分な画素数が残っており一理あるかと思います。
では実際に写真で見てみましょうか。次の画像はGalaxy S23 Ultraの広角レンズ(2億画素)で撮影したものです。
この画像を10分の1程度のサイズにトリミングした画像が次の画像です。
実際には十分な画素数が残っているはずですが、ディスプレイで見ても画像は結構荒いです。
ここで、Galaxy S23 Ultraには3倍望遠と10倍望遠が搭載されていることを思い出してみましょう。まず3倍望遠で同じ位置から撮影しました。
3倍望遠で撮影した画像の方が綺麗でしょう。
さらに10倍望遠での画像です。
これもトリミングした画像より綺麗だと思います。
実際のファイルサイズは次のとおりでした。
2億画素を10分の1にトリミング:16MP
3倍望遠:9MP
10倍望遠:9MP
なので、3倍望遠や10倍望遠の画像よりも2億画素を10分の1にトリミングした画像の方が画素数が多いです。それでも実際には3倍や10倍望遠の方が綺麗でした。
一眼カメラの場合だと、レンズはとても高価で持ち運ぶにしても重たいです。またレンズの付け替えもそれなりに面倒です。そのためレンズ1本で済ませて後でトリミングするために高画素機を使う、ならまだわかります。
しかし、最近のスマホには超広角、広角、望遠などと複数のレンズが搭載されています。Galaxy S23 Ultraの場合だと広角レンズ(2億画素)で撮影してトリミングするより、望遠レンズの方が綺麗な写真が撮れます。そうなると5,000万画素、2億画素の存在意義が本当にないです。
高画素のデメリットも多いです。暗いとこに弱い、容量が大きいなどです。容量にも今はお金を払う時代です。
高画素カメラを各スマホメーカーが搭載してくるのはマーケティング戦略による時代の流れで仕方がないことかと思います。ただ、消費者からすれば800万画素あれば十分であり、高画素に踊らされる必要はありません。