スマートフォンカメラにおける星空撮影の最前線を走るGoogle Pixel 9 ProとiPhone 16 Proに焦点を当て、その性能を徹底的に比較します。両機種は、いずれも高度な撮影機能を備えており、日中の明るい場所での撮影では、その性能差は判別しにくくなってきています。しかし星空撮影という極限の条件下では、その性能差が明確に現れます。実際の作例を交えながら、詳しく解説していきます。
1. Pixel 9 Pro vs iPhone 16 Pro:星空比較
まず、Pixel 9 ProとiPhone 16 Proで撮影した星空の写真です。
Pixel 9 Pro

iPhone 16 Pro

どちらのスマートフォンも、天の川や美しい星空を捉えています。 ただし、よく見ると、両者の写真にはいくつかの違いが見られます。夜空の色合い、星の明るさ、そして細部の描写など、それぞれの機種の個性が表れているのです。これらの違いを詳しく見ていきます。
1.1 色合いとコントラスト
まず、夜空の色合いに注目してみます。Pixelは全体的に赤みが強く、iPhoneは青みが強い傾向にあり、両機種のホワイトバランスなどの設定の違いが表れています。またPixelでは全体的にコントラストが強くはなく落ち着いた印象があります。一方、iPhoneでは、コントラストが強調され、明るい部分がより明るく、暗い部分がより暗く描写される傾向にあります 。このコントラストの違いは、星空写真全体の印象を大きく左右します。
1.2 暗部の表現力
次に、暗部の表現力を見てみます。Pixelは黒の濃淡を豊かに表現する能力に優れており、鐘を支える柱の下部まで、かすかにその存在を認識できます。一方、iPhoneは暗部が潰れて階調表現が失われているため、柱の下部は写っていません。
2. 細部の比較:鐘のディテールに注目
さらに、写真の中心に写る「鐘」を拡大して比較してみましょう。
Pixel 9 Pro

iPhone 16 Pro

Pixelでは、鐘の右側の星空に、わずかなぼやけが見られます(赤矢印) 。このぼやけは、Pixelの星空撮影における「スタック処理」という技術が影響していると考えられます。
2.1 Pixel 9 Proのスタック処理:星空を鮮明にするための技術
暗い場所での撮影はノイズと呼ばれる白い点のようなものがランダムに入りますが、スタック処理と呼ばれる複数の画像の重ね合わせで、ノイズを低減し、より高画質な写真を生成する技術です。公式には明らかにされていませんがPixel は、星空撮影時にこのスタック処理を活用していると考えています。
具体的には、約4分間の撮影中に、16秒のシャッタースピードで撮影した15枚の画像を自動的に重ね合わせます。この処理によって、ノイズが少なくクリアな星空写真を生成できるのです。ただし、星は地球の自転によってわずかに位置を変えるため、画像を重ね合わせる際に、星の位置を合わせるために各画像を少しずつずらして補正する必要があります。この補正処理の過程で、被写体が邪魔をして周辺の星空にわずかなぼやけが生じる可能性があります。また、星空は画面の右上方向に移動するため、被写体の右上に特にこのぼやけが出やすいと考えられます。
2.2 iPhone 16 Proのスタック処理:短時間で星空を捉える
一方、iPhone も公表されていませんが星空撮影ではスタック処理を行っていると考えています。iPhoneでは10秒のシャッタースピードで撮影した3枚の画像を合成する、合計30秒の撮影時間となっています 。Pixelと比較して撮影時間が短いため、星の動きが少なく、ぼやけも目立ちにくいと考えられます。
3. 他の写真での比較:同様の傾向が見られる
他の写真でも、同様の傾向が見られました。
Pixel 9 Pro

iPhone 16 Pro

この写真でも、色合いやコントラストなど同様です。また展望台の右上の星空が、Pixelの方がややぼやけています 。この結果は、PixelとiPhoneのスタック処理の特徴を改めて示しています。
4. 青ハロ・パープルフリンジの検証:色収差を抑える
次に、星の周囲に発生しやすい「青ハロ」や「パープルフリンジ」と呼ばれる現象について検証します。
青ハロ・パープルフリンジとは?
青ハロやパープルフリンジは、写真の明るい部分と暗い部分の境界線に、青や紫色の縁取りが現れる現象です。これは、レンズの光学的な性質によって発生する色収差の一種で、特に星空写真のように、強い光と暗闇が混在するシーンで目立ちやすくなります。一般的に、青ハロやパープルフリンジは、不自然な色のにじみであり、写真のシャープさも損なうため、好ましくないとされています。
この青ハロやパープルフリンジがどの程度現れているか、次の画像で比較検証します。
Pixel 9 Pro

iPhone 16 Pro

写真全体を見ると、色合いやコントラストは、これまでの写真と同様の傾向が見られます 。青ハロやパープルフリンジをよりわかりやすくするために中心部付近を拡大しました。
Pixel 9 Pro

iPhone 16 Pro

iPhoneでは、星の周囲に青や紫の色のにじみが多く見られますが、Pixel 9 Proでは比較的少ないです 。この結果から、青ハロやパープルフリンジの抑制に関しては、Pixel 9 Proの方が優れていると言えるでしょう。
なお、PixelとiPhoneの星空撮影については以下に詳細に記載していますので参考にしてください。
Google Pixelで星空撮影!天の川や美しい夜空を簡単に撮影する方法
iPhoneで天の川・星空撮影の限界に挑戦 ソフトウェア処理の秘密も公開【内容変更】
5. まとめ:どちらのスマホが星空撮影に向いている?
今回の比較を通して、Pixel 9 ProとiPhone 16 Proは、どちらも非常に高い星空撮影性能を持つスマートフォンであることが改めて確認できましたが大きな違いがいくつかありました。
5.1 Pixel 9 Pro:自然な描写と色収差抑制に強み
Pixel 9 Proは、自然な色合いと豊かな階調表現、そして色収差の抑制に優れています。スタック処理によるノイズ低減効果も高く、クリアな星空写真を撮影できます。ただし、スタック処理の影響で、被写体によっては周辺の星空にわずかなぼやけが生じる場合がある点は留意が必要です。
5.2 iPhone 16 Pro:コントラストとシャープネスを重視
iPhone 16 Proは、コントラストが高く、星や天の川をくっきりとシャープに描写する能力に長けています。短時間のスタック処理で星空を捉えるため、被写体周辺の星空のぼやけも少ないです。ただし、暗部の階調表現や色収差の抑制に関しては、Pixel 9 Proに劣る場合があります。