【スマホで星空・天の川撮影】Galaxy S25 Ultra vs Pixel 9 Pro XL vs iPhone 16 Pro

ハイスペックカメラを搭載したスマートフォン、Galaxy S25 Ultra、Google Pixel 9 Pro XL、iPhone 16 Pro。これらのフラッグシップモデルは、高度なカメラ性能により、難易度が高い星空や天の川の撮影にも期待が高まります。そこで今回は、これらの3機種を用いて実際に星空・天の川撮影を比較し、その実力を徹底検証しました。カメラ性能に定評あり天体撮影モードも搭載されたGalaxyには「異変」を感じる結果となりました。

重要な注意点:RAW現像とJPEG撮って出しの違い

 今回の比較において、GalaxyはRAW形式での撮影と編集を前提としている一方、PixelとiPhoneはJPEG撮って出しでも十分に美しい写真が得られるなど条件の違いがあります。そのため、単純な比較は難しいことをご理解ください。あくまで参考として、各機種の特性を見ていきましょう。

比較条件:広角レンズ

 今回の比較では、各機種の広角レンズを使用し、ほぼ同一の場所・時間帯で撮影を行いました。

広角レンズで捉える星空と地上の風景

まずは、広角レンズで撮影した星空と地上の風景を比較してみましょう。

Galaxy S25 Ultra

この一枚で見ると、Galaxy S25 Ultraで撮影された星空も十分に綺麗に感じられます。スマートフォンのカメラでここまで写せるのは素晴らしいと言えるでしょう。しかし、厳しい見方をすると天の川の描写がややぼんやりとしています。地上の風景も暗くなりはっきりとは写っていません。

Google Pixel 9 Pro XL

Pixel 9 Pro XLで撮影された写真は、天の川が非常にくっきりと写し出されており、地上の風景も細部まで鮮明に捉えられています。見える星の数もとても多いです。一眼ミラーレスカメラで星空撮影に慣れている方にとっては、Pixelの写真が最も自然で違和感がないかもしれません。また全体的にやや赤みが強く写る傾向が見られました。

iPhone 16 Pro

iPhone 16 Proで撮影された写真も、天の川がくっきりと描写されていますが、コントラストは最も強いように見えます。Pixel同様地上の風景もとてもクリアです。特に、写真全体に青みがかって印象的ですが、このiPhoneの写真が好みという方が多かったです。

ホワイトバランスと歪みについて

写真の色味の違いについてですが、これはスマートフォン側で自動的に行われるホワイトバランス調整や画像処理によるものと考えられます。もし、異なる色味で表現したい場合は、撮影後の編集で調整が可能です。 また、写真左端に写る電柱に注目すると、どの写真でも斜めに写っています。これは、カメラを上に向けて撮影する際に発生するパースペクティブ(遠近法)による自然な現象です。しかし、GalaxyやiPhoneの電柱はやや傾きが大きく、Pixelの電柱は比較的まっすぐに近い状態で写っています。一般的に広角レンズは歪みが生じやすいのですが、この写真を見る限り、Pixelはデジタル処理による歪み補正も優れている可能性があります。

拡大比較:星の数と描写力

次に、各写真の中央やや右部分を拡大して、星の数と描写力を比較してみましょう。

Galaxy S25 Ultra

Google Pixel 9 Pro XL

iPhone 16 Pro

拡大してみると、星の配置はどの写真もほぼ同じですが、明らかに星の数が異なります。Galaxyで写っている星の数は、PixelやiPhoneに比べて圧倒的に少ないことがわかります。PixelとiPhoneでは、写っている星の数に大きな差は見られませんが、わずかにPixelの方が多くの星を捉えているように見えます。

ノイズリダクションの影響

この星の数の違いは、カメラに搭載されたセンサーの性能差も考えられますが、画像処理、特にノイズリダクション処理の違いが大きく影響していると思われます。デジタル写真におけるノイズとは、画像上に現れる余計な小さな点のことですが、特に暗い場所で撮影するとどうしても生じてしまいます。

iPhoneでは、星空写真撮影においてはノイズ除去のために複数の写真を重ね合わせる「スタック処理」が行われていると予想しています。その根拠について以下に記載しているので参考にしてください。

iPhoneで天の川や星空撮影の限界に挑戦 ソフトウェア処理の秘密も公開【内容変更】

おそらく、Pixelも同様のスタック処理を採用していると考えられます。しかしノイズを除去する一般的な方法の一つに、画像が小さな点(ピクセル)の集まりで構成されていることを利用した処理があります。具体的には、あるピクセルの色が周りのピクセルの色と大きく異なる場合、そのピクセルの色を周りの色に近づける処理を行います。この方法を使うと、画像内のノイズを目立たなくすることができます。しかし、一方で、画像の細かい部分やわずかな情報も一緒にぼかしてしまうという欠点があります。 Galaxyの写真で天の川がぼやけているのは、このノイズリダクション処理が強く働きすぎているためかもしれません。また実際にプログラミングで星空写真のノイズ除去を試みると、星とノイズを正確に区別することが非常に難しいことがわかります。ある程度の大きさ以上の白い塊を星と認識し、それ以下のものをノイズとして処理してしまうと、小さな星まで消えてしまいます。拡大したGalaxyの写真を見ると、比較的大きな星は残っていますが、それよりも小さな星は綺麗に消えているように見えます。ぼやけた天の川や消えた星を見ると、Galaxyではこの一般的なノイズリダクション処理が行われているように思えます。

参考:Galaxy S23 Ultraの星空写真

以前のモデルであるGalaxy S23 Ultraでは、以下のような美しい天の川の写真を撮影することができました。

Galaxy S25 Ultraでは同等の写真が撮れないように思えます。もしソフトウェアの処理方法が変更されたのであれば、ぜひ以前のバージョンに戻してほしいと個人的に願っています。

星の色味の違い:画像処理 or 天体の特性?

星を拡大した写真を見ると、PixelとiPhoneの写真には、青や黄色、白など、異なる色の星が写っているのが確認できます(特にiPhoneがわかりやすいです)。PixelとiPhoneで色の写り方が似ていますが、よく見るとGalaxyでも同様の写り方をしています。この色の違いの原因としては、まずスマートフォン側の画像処理による色の強調や調整が考えられます。しかし、スマホ内では複雑な画像処理が行われおり、スマホメーカーが異なれば当然処理方法も大きく異なるはずです。そうなると星の色まで同じように写ることが画像処理の結果としては説明がしにくいように思われます。残る可能性としては、星(恒星)そのものの色の違いをスマートフォンが捉えているということが考えられます。確かに恒星の表面温度によって光の波長が異なり、写真に写る色も変化することは理論的に考えられます。しかし遥か彼方、〇〇〇光年離れた恒星の表面温度が、こんな小さなスマートフォンのカメラで捉えられるものなのでしょうか??私の手元にある機種は限られていますが、本当にありがたいことに、このサイトを見た方々からスマートフォンで撮影された星空写真を提供していただきました。それらを見ると、色編集されていない写真の中には色の異なる星が写っているものが多くありました。下の画像は、その写真の一部を拡大したものです。

許可をいただき掲載しました。pixelですが、詳しい機種名は不明とのことです。左の星が青に、右の星は黄色に写っているのが興味深いですね。

もし、お手元にスマートフォンで撮影された星空写真があれば、ぜひ拡大して確認してみてください。新たな発見があるかもしれません。

撮影方法の違い:使いやすさと効率性

最後に、各機種の星空・天の川撮影における方法の違いを見ていきましょう。

Galaxy S25 Ultra

Galaxyの利点としては、ギャラリーアプリとの連携が素晴らしく、RAW形式で撮影された画像を簡単に編集できる点が挙げられます。また、星座ガイドなどの機能も搭載されており、星空観察のサポートも充実しています。 一方で、大きな欠点として、撮影した写真がすぐに確認できないという点があります。Galaxyでは10分を超える長時間露光撮影が可能になりましたが、画像が完成するまで10分間待つ必要があります。もし構図がずれていた場合など、10分後に初めてその失敗に気づき、再度10分間の撮影をやり直さなければなりません。

Google Pixel 9 Pro XL

Pixelの天体写真モードでは、最大4分間の露光時間で撮影が行われ、撮影中に徐々に画像が画面に表示されていくため、仕上がりを4分経過せずにある程度予測し出来るため、失敗したと思えば途中でやり直すことが可能です。

iPhone 16 Pro

iPhoneの星空撮影では、最大30秒の露光時間で撮影が行われます。30秒後に結果を確認できるため、構図の調整や狙った星や星座が写っていなくても何度も試行錯誤しながら行えます。

星空や天の川の撮影において、10分という時間は非常に長く、その間に天候が急変したり、地球の自転によって星や天の川の位置が大きく移動してしまう可能性があります。Galaxyには、この点をぜひ改善していただきたいと思います。

まとめ

今回の比較を通して、Galaxy S25 Ultra、Google Pixel 9 Pro XL、iPhone 16 Proは、それぞれ異なる特徴を持っていることが明らかになりました。

  • Galaxy S25 Ultra: RAW現像を前提とする高いポテンシャルを持つが、ノイズリダクションの強さと撮影に時間がかかる点が課題。
  • Google Pixel 9 Pro XL: 天の川や星の描写力と地上の風景のシャープさに優れる。撮影中に仕上がりを確認できる点も大きなメリット。
  • iPhone 16 Pro: 安定した高画質と多くの人が好む色味で、手軽に美しい星空写真を撮影できる。

あくまでも今回の比較は一例ですが検証は続けていき、さらに加筆していきます。