iPhoneで天の川・星空撮影の限界に挑戦 ソフトウェア処理の秘密も公開【内容変更】

※2025年4月時点、画像の保存形式についての推奨をRAWからJPEGまたはHEIFへと変更しています。

iPhoneで天の川や星空を撮影することができるのをご存知でしょうか?実際に、iPhone 16 Proを使って撮影した天の川の写真です。

これほどの天の川、星空をiPhoneで撮ることができるとは信じられないかもしれませんが、技術の進歩により、実際にそのような写真を撮影することが可能になりました。

夜空の星々、そして壮大な天の川はもちろんのこと、眼下の水面にも星が鮮やかに映し出されています。iPhoneのカメラの性能の高さは周知の事実ではありますが、これほどの情景を捉えられるとは、想像を遥かに超えるものではないでしょうか。

写真全体に青みがかって印象的ですが、この色味はスマートフォン側で自動的に行われるホワイトバランス調整や画像処理によるものと考えられます。しかしながら、月や太陽が近くにあれば、その光の影響を受けて天の川の色が変わるようです。

この写真では左側に太陽や月がかすかに見え始めているという、珍しいシチュエーションですが、天の川がオレンジ色になっています。近くにある天体などで色が変わって見えるのも面白いです。とはいえ、iPhoneでこれほどの天の川の写真を撮るには、かなりのコツと知識が必要です。

そこで今回は、iPhoneでの星空や天の川の撮影方法、さらにiPhone内で行われている写真の処理方法に関しても詳しくご紹介します。ぜひ星空撮影にチャレンジしてみてください。

iPhoneでの天の川・星空撮影に必要なアイテム

iPhoneで天の川や星空を美しく撮影するために、いくつかのアイテムを準備することをおすすめします。これらを整えておけば、より素晴らしい写真を撮ることができるでしょう。

1. 三脚

星空撮影にはシャッタースピードを長く設定する必要があるため、カメラがぶれてしまうことを防ぐために三脚が便利です。iPhoneをしっかりと固定できる三脚を用意することで、安定した撮影が可能になります。

2. 暗い場所

星空を撮影するには、街灯や人工的な光が少ない、できるだけ暗い場所を選ぶことが重要です。冒頭に紹介した天の川の写真も、可能な限り真っ暗な場所を選んで撮影しました。自然光が少ない場所で撮影することで、星空がより鮮明に映えます。ただし、安全には十分に配慮してください。

iPhoneでの星空撮影手順

それでは、実際にiPhoneを使って星空や天の川を撮影するための具体的な手順を解説します。

1. iPhoneを三脚に固定

まずは、iPhoneを三脚にしっかりと固定します。三脚がない場合でも、安定した場所にiPhoneを置くことで撮影できますが、その場合は手振れを防ぐために、タイマー機能を活用するなどの工夫が必要です。

2. カメラアプリを起動

次に、iPhoneのカメラアプリを起動し、画面上部にある「∧」マークをタップします。ここで例えば「設定」→「カメラ」→「フォーマット」→「プロデフォルト」でProRAW(最大、48MPまで)を選択している場合は以下の画像のようにRAW最大と表示されています。RAW最大をタップすると保存形式をRAWに変更できます。一般的には、RAW形式は細かな画像編集に適しており、推奨されることが多いです。しかし、iPhoneで星空や天の川を撮影する場合には、JPEGやHEIF形式での保存をおすすめします(RAWに斜線が入っている状態がJPEGかHEIF形式での保存になります)。

iPhoneでの星空撮影step1

この理由は、実際の画像を見ていただくのが一番わかりやすいと思います。まずは、RAW形式で撮影した画像をAdobe LightroomでJPEGに変換したものです。

天の川や星の写り自体は確認できますが、特に天の川の描写がややぼんやりしています。

次の写真は同じ場所からJPEG撮影したものです。

特に天の川が、とてもくっきり美しく写っているのがわかると思います。RAW形式で保存し、Adobe Lightroomで同じような仕上がりを目指して編集するのはかなり手間がかかります。一部のソフトでは比較的簡単に調整できる場合もありますが、ソフト選びの段階でハードルがあり、最終的な仕上がりも「JPEGで撮影した画像に近づけた」というレベルにとどまることが多いと思います。それであれば、最初からJPEG形式で保存する方が効率的ですし、JPEGでも十分に編集は可能です。

なお、iPhoneでは「設定」→「カメラ」→「フォーマット」で「高効率」を選ぶとHEIF形式で、「互換性優先」を選択するとJPEG形式での保存になります。HEIFとJPEGとの違いを比べましたが、画質の差はほとんど感じられなかったため、どちらを使っても問題ないと思います。

※解像度(画素数)について

iPhoneでは、「設定」アプリのカメラ設定で写真の解像度を12MPまたは24MPに選択できます。12MPは1,200万画素、24MPは2,400万画素のことです。しかし、ナイトモードで星空を撮影する際は、どちらの設定にしていても自動的に12MPで記録されます。

一見すると不満に感じるかもしれませんが、特に星空撮影においては12MPの方が適しています。一般的に高画素であるほど画質が良いと考えられがちですが、1,200万画素の時点でその画素数を表示できるディスプレイは非常に限られています。また、そのディスプレイがあったとしても人間の目でその差を認識するのは困難です。

むしろ、高画素になるほど暗所での撮影に弱く、処理時間も長くなる傾向があります。そのため、暗い星空を撮影する際には、12MPの方がノイズが少なく、スムーズな処理でより適した結果が得られるのです。

3. 画角とナイトモードを設定

画角(撮影範囲)は「.5」「1×」「2」「5」のいずれかを選べます。次にナイトモードのマークを押します。

iPhoneでの星空撮影step2

数多くの星を写したい場合は「.5」を選びがちですが、iPhone 16 Proで星空を数百枚撮影した結果、最もおすすめなのは「1×」で次に「2」の画角です。「.5」を選ぶと、写真自体が荒くなることが多いため、「1×」や「2」の選択が成功しやすいと言えます。

4. 長時間露光で撮影

撮影時は、iPhoneをしっかりと固定した後、シャッターボタンを押します。暗い場所で星空をきれいに撮るには、シャッターを30秒間開ける「長時間露光」が効果的です。そのため、カメラの設定を30秒に合わせましょう。もし30秒の設定が表示されない場合は、スマホがしっかり固定されていないことが原因かもしれません。強い風でスマホが少しでも揺れると、30秒の設定が出ないこともあります。スマホがしっかり固定されていて、30秒の設定ができれば、星空を鮮明に撮影できますよ。

iPhoneでの星空撮影step3

画角の選び方:最適な設定を見つけよう

iPhoneでの星空撮影では、画角をどれにするかが非常に重要です。ここでは、各画角の特徴とおすすめの選び方を紹介します。画角ごとの撮影写真例は同じ位置から画角だけを変えて撮影しました。

1. 画角「.5」

広範囲の星空を撮りたい場合はこの画角を選択することが多く星空撮影で最も使用される可能性の高い画角かとも思います。ただ、iPhone 16 Proでは星がうまく撮れないことが多いです。数百枚撮影しましたが、真っ暗になったりそもそも星がほとんど写っていないなど、上手くいったと思える写真が一枚もありませんでした。この画角で上手く撮影する方法をまだ見つけていません。

2. 画角「1×」

iPhone 16 Proでは最もおすすめの画角です。星空や風景が美しく撮れる可能性が高いです。冒頭で紹介した写真はすべてこの画角です。

このように、物や人物と星空を一緒に捉えることで、様々なシーンで活用できる汎用性の高さも魅力です。

3. 画角「2」

こちらは、やや狭い範囲での撮影に向いています。星空の一部分を詳細に捉えられる一方、広い範囲の星景色を収めるには少し物足りないかもしれません。「1×」と比較すると、風景はほとんど入らなくなります。しかし、特定の星座を狙って撮影したい、といった目的がある場合には、試してみる価値はあるでしょう。次の写真は、この画角で北斗七星を撮影したものです。

比較として、同じ場所でほぼ同時刻に「1×」で撮影し、同じ画角にトリミングしたものが次の写真です。

よく似た結果ですが、非常に小さな星に関しては、画角「2」の方がわずかに多く捉えられているようです。そのため、狭い範囲により多くの星を写し込みたい場合は、画角「2」の方が有利と言えます。

4. 画角「5」

この画角では、非常に狭い範囲を撮影することになります。そのため、星の一つ一つは比較的綺麗に写りますが星空全体を写すことが難しいです。また画角「2」をトリミングしたものとほとんど画質に違いがありません。このため、どうしてもこの画角が必要なら「2」で撮影してトリミングした方が効率的に目的の星や星座を撮影できると思います。

こちらは、画像全体の色の調子も他の画角とは異なり、全体的に画質も粗く感じられるため、あまりおすすめできません。

iPhone 16 Proでの星空写真の処理方法

次に、撮影した星空写真をより美しく仕上げるためにiPhoneがどのように処理を行っているかについて説明します。例えば次の写真では、星空と風景が綺麗に写っていますが、左下に飛行機や人工衛星と思われる白い線が見えます。この白い線に違和感を感じます。

拡大したのが次の画像です。

撮影する30秒間に飛行機や人工衛星は進みますが、基本的に急激に向きを変えることはありません。しかし赤矢印の場所で不自然に軌跡が変わっています。撮影しているうちに気づいたものですが、改めて他の写真も見返してみてもどの写真も2か所で不自然に軌跡が変わっていました。

この線が不自然に見える理由は、iPhone内でスタック処理が行われていると推測しました。

スタック処理とは?

地球は自転しているため星空は少しずつ動いて見えます。たとえばiPhoneのように30秒間の撮影では星がかなり動き、形が丸ではなく線のようになります。しかし10秒ごとに撮影した写真を少しずつずらしながら重ね合わせることで、星が丸い形を保ち、ランダムに発生するノイズも打ち消すという効果もあります。この処理により、星空が鮮明に写り、より美しい写真が完成します。しかし、その過程で飛行機や人工衛星の軌跡も影響を受け、不自然に写ってしまったと考えられます。

スマホでの天体撮影技術の進化

近年、GalaxyやPixelなどのスマートフォンでは、天体撮影専用モードが搭載されており、より精度の高い星空や天の川の撮影が可能となっています。今回わかったのですがiPhoneでも実は天体撮影の対策がされていますね。なお、GalaxyやPixelの天体撮影モードでも非常に高度なソフトウェア処理がされているはずですが、どのような処理を行っているのかまだ推測できていません。

いずれにしてもスマホによる天体撮影技術は進化し続け、ますます多くのユーザーが簡単に美しい天の川や星空を撮影できる時代が到来しています。

Galaxy S25 Ultra、Pixel 9 Pro XL 、iPhone 16 Proでの星空、天の川写真を比較していますのでぜひ参考にしてください。

【スマホで星空・天の川撮影】Galaxy S25 Ultra vs Pixel 9 Pro XL vs iPhone 16 Pro


まとめ

iPhoneで天の川や星空を撮影するためには、いくつかのコツと準備が必要です。しかし、適切な設定と少しの工夫で、誰でも素晴らしい星空写真を撮影することができます。最初は上手くいかなくても継続してみてください。きっと奇跡の一枚が撮れると思います。